超音波医学
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症例報告
Micro-vascular imagingモードによる低流速血流評価が診断に有用であった精巣区域梗塞の1例
國近 瑛樹丸上 永晃石黒 はるか太地 良佑中井 靖藤本 清秀岡田 文美田中 利洋平井 都始子
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2022 年 49 巻 2 号 p. 159-164

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抄録

精巣や精巣上体などの陰嚢および陰嚢内の構造を評価するために最も広く使用されている診断法は超音波検査である.精巣区域梗塞は,精巣の一部が虚血性変化を呈した稀な疾患であり,非特異的な臨床症状を示すことから,画像診断の担う役割は大きい.しかし,現状の画像評価では精巣腫瘍との鑑別がしばしば困難であり,外科的加療が施行されることが多い.今回,我々は超音波検査におけるmicro-vascular imaging(MVI)モードによる低流速血流評価が診断に有用であった精巣区域梗塞の1例を経験したため報告する.症例は60代男性.一過性の陰嚢痛を機に左陰嚢腫脹を認めた.前医CTと超音波で精巣腫瘍の可能性が否定できず,当院泌尿器科を紹介受診した.当院で施行した超音波検査では,左精巣中央腹側に,Bモードで楔状,扁平な低エコー域を認め,カラードプラ法やMVIモードでは共に血流表示は欠損し,梗塞や壊死が示唆された.低エコー域の周囲には帯状の高エコー域が認められ,カラードプラ法ではこの領域に一致した血流表示を指摘できなかったが,MVIモードでは梗塞巣周囲の脈管から中心部に向かう櫛状の微細な血流表示が認められ,高エコー域に一致していた.また,左精巣には約180度の易回転性を認めた.MRIでは左精巣内に楔状のT2強調像で低信号域を認めた.以上の所見から,左精巣の易回転性を背景とした間欠性精巣捻転による精巣区域梗塞を考えた.腫瘍マーカー(AFP)の軽度上昇を認めたことや精巣の易回転性の点から,高位精巣摘出術の方針となった.病理組織学的に,精巣区域梗塞と最終診断された.

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© 2022 公益社団法人 日本超音波医学会
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