2022 年 49 巻 2 号 p. 141-149
目的:医用超音波は,硬膜外麻酔時の穿刺位置の特定に用いられている.しかし,胸椎の構造は複雑であり,胸椎と筋組織の描出の区別は難しい.本研究では,超音波の反射・散乱特性の差異に基づき,骨と筋組織の描出を区別することを目的とする.方法:骨と筋組織からの受信信号の差を実験的に調べた.骨を強調するための新しいパラメータとして,理想的な遅延線上のみの受信信号の振幅と,その周囲の広い範囲における受信信号の平均振幅との比を提案した.結果:はじめに,基礎実験により,骨と筋組織からの受信信号の差を確認した.また,トリもも肉を用いたin vitro実験,ヒトにおけるin vivo実験により,その差を確認した.両実験において,提案法は,通常のBモード像と比較して,骨の描出を強調し,筋組織の描出を抑制することに成功した.結論:骨からの反射特性と筋組織からの散乱特性の差を用いて,提案法により,骨と筋組織を区別することができた.