2022 年 49 巻 2 号 p. 81-86
心臓ペースメーカによる心臓再同期療法(CRT)の臨床応用によって,心臓内の伝導障害,特に左脚ブロックによって生じる同期不全が心機能悪化に関与していることが広く知られるようになった.これまでの研究によりCRTは左脚ブロックには有効であるが,右脚ブロックなど非左脚ブロック型の伝導障害に対する効果は一定しないことが明らかになっている.しかし,左脚ブロックであっても壁運動からみた非同期には多様なパターンがあり,CRTの効果が得られない症例も少なくない.したがって,現在CRTの適応決定にはガイドラインによる推奨レベルが尊重されているものの,個別化医療の視点から適応を検討することが重要である.残念なことに現行のガイドラインでは心エコー図指標はCRT適応基準に含まれていないが,これまでCRTへの反応を予測し,その適応の決定を助けるための心エコー図指標が多く提唱されてきた.その過程では,Mモード法に始まり,組織ドプラ法,スペックルトラッキング法,そして3次元心エコー図法と様々な心エコー図手法が応用されてきている.CRTデバイスの進歩も日進月歩であり,より複雑なシーケンスによるペーシング機能を備えるようになっている.このため,3次元スペックルトラッキング法のような先進的な心エコー図法を心臓同期不全の評価に応用することが,個別化医療の観点でCRT適応を検討するうえで重要だと考える.