論文ID: JJMU.A.132
濃縮嚢胞は日常臨床や検診では非常によく遭遇し,頻度の高い所見である.今回,エラストグラフィで歪みの低下を認めたため要精検としたが,最終的に濃縮嚢胞であった非典型例を経験した.症例は40代女性,左乳房11時半方向に縦横比の大きな不整形の低エコー腫瘤を認め,後方境界線の断裂が疑われ,Bモードで悪性を考慮する所見であった.カラードプラで辺縁に血流信号を認め,エラストグラフィでelasticity score 4,fat-lesion-ratio (FLR) 17.2と歪みの低下が認められた.40代で初所見であったこともあり,カテゴリー5 (JABTSカテゴリー判定による)と判定した.針生検の結果,病理組織学的に濃縮嚢胞に合致する所見が得られた.生検後約一年後の超音波では,同部位に平坦化した腫瘤を認め,悪性を示唆する変化はなかった.Bモードで非典型的な濃縮嚢胞症例で,エラストグラフィによって悪性寄りに判断してしまう偽陽性例があることを知って診断していくことが重要である.