論文ID: JJMU.A.183
目的:良性および悪性甲状腺結節における微細高エコーの出現頻度とその原因物質,超音波所見から原因物質の推定が可能かを明らかにする.対象と方法:甲状腺結節性病変144例(乳頭癌56例,濾胞癌4例,濾胞腺腫57例,腺腫様甲状腺腫27例)の超音波所見と組織所見を比較検討した.結果:微細高エコーは乳頭癌の69.6%に認められ,他の組織型と比べ有意に高頻度であったが,濾胞腺腫の21.1%,腺腫様甲状腺腫の25.9%にも観察された.組織学的に,微細高エコーがみられた58例全例に砂粒体,線維組織内小石灰化,シュウ酸カルシウム結晶,コレステリン結晶,砂粒体様物質のいずれかが観察され,微細高エコーのない86例中76例にはこれらの微細構造物は認められなかった.考察:微細高エコーと組織学的な微細構造物の有無は93.1%の症例で一致しており,超音波画像の微細高エコーは5種類の微細構造物を反映していると考えられた.超音波画像のみで原因物質の推定は困難であったが,無エコー結節内でコメットサインを伴い緩やかに移動するものはコレステリン結晶,動きのないものはシュウ酸カルシウム結晶の可能性が高かった.結論:甲状腺良性結節の22.6%に微細高エコーを認め,原因物質は,砂粒体以外の4種の微細構造物であった.超音波像で微細高エコーの原因物質を鑑別することは困難であったが,付随所見を考慮することで,一部の原因物質の推定は可能であった.