論文ID: JJMU.A.194
はじめに:乳房超音波検査において構築の乱れ様の低エコー所見であるにも関わらず,精検や経過観察から正常のバリエーションと判断できた症例を経験してきた.今回このような低エコー所見のどのような超音波所見に注意すれば正常のバリエーションとして精検不要とすることができるか検討した.対象と方法:2013年4月~2015年3月に施行された検診超音波で,一見癌に類似する構築の乱れ様の低エコー所見27名31所見を対象とした.その内訳は,精検の結果明らかな病変のなかった7所見と,精検不要として繰り返し受診により経過を追えた24所見である.これらを対象として超音波所見をretrospectiveに検討し,その後の経過も確認した.結果と考察:(1)クーパー靭帯による減弱ではない位置にも存在する(2)カラードプラにて分岐しない血管を認める(3) strain elastography施行全例で歪みの低下を認めないという共通した所見を認めた.分布は乳房の外側に多かった.細胞診あるいは針生検を施行した4所見はいずれも増殖性病変を認めなかった.中央値60ヵ月の経過中,精検例も含めた全例で癌発生は1例もないことが確認された.結論:構築の乱れ様の境界不明瞭な低エコー所見で一見癌に類似するもののなかに正常のバリエーションと判断してよいものがあることがわかった.不要な精検や組織診を回避するためにこのような症例を理解することは極めて重要である.