抄録
今回,心室中隔欠損と僧帽弁狭窄を合併し高度の肺高血圧を来たした11ヵ月の男児を経験した.心臓超音波検査で,大きな膜様部心室中隔欠損とcomplete bridge typeの重複僧帽弁口がみられ,左室流入血流圧較差は増大し,顕性化した僧帽弁狭窄の所見を認めた.心臓カテーテル検査でも高度の肺高血圧を呈し,NO負荷試験で肺血管閉塞性病変は否定した.相対的僧帽弁狭窄の程度が不明のため外科的治療として心室中隔欠損閉鎖術を行った.術後に肺高血圧が軽減し,僧帽弁狭窄の程度は軽度のため経過観察とした.心室内左右短絡を伴った重複僧帽弁口の評価において,術前に様々な方法で有効僧帽弁口面積を推測することが,治療方針決定に重要であり,その方法として心臓超音波検査は有用であった.