抄録
64歳,男性.検診異常を機に発見された肝腫瘤を主訴に入院精査.CT,MRIで胆嚢に近接して肝S4に45 mm大の腫瘤性病変を認めたが,胆嚢の異常は指摘できず,肝内胆管癌や肝膿瘍が疑われた.腹部超音波検査では,S4に約6 cm大の類円形の腫瘤を認めた.境界はやや不明瞭で辺縁は整,内部は等‐高エコーの腫瘤であり,肝膿瘍は否定的であった.胆嚢には壁不整は指摘できず,隆起性病変も認めなかった.高周波プローブを用いた超音波検査で,胆嚢底部に肝腫瘤と連続する限局性の不整な壁肥厚を認めた.造影超音波検査で,腫瘤と胆嚢の壁肥厚は,動脈優位相において共に強い濃染を認めた後,腫瘍辺縁にリング状濃染を認めた.後血管相では明瞭な欠損像を呈した.以上の超音波所見より胆嚢癌肝浸潤と診断し切除術を施行.病理組織所見で肝腫瘤は,低分化型から中分化型の管状腺癌であった.胆嚢壁は全体に硝子化していたが,胆嚢内腔面にも低乳頭状を呈する分化型腺癌を認め,平坦浸潤型の胆嚢癌肝浸潤の所見であった.胆嚢床に存在する肝腫瘍は高周波プローブを用いた超音波で胆嚢との関係を詳細に観察することが有用である.また,胆嚢との連続性が疑われた場合は,造影超音波検査での血流評価が有用であると考えられた.