論文ID: JJMU.K.24
目的:体表超音波装置による総頸動脈内中膜厚(IMT)は,代表的な早期動脈硬化臨床指標として確立されている.健常者のIMT基準値はおおよそ0.1×(10歳ごとの年齢)+0.2 (mm)であり,少なくとも0.1 mm単位の精度を要する.一方,IMTの計測には装置間差異を始めとする様々な誤差要因の存在が懸念されていた.本研究の目的は,IMTファントムにより装置間差異を検証することである.方法:生体に近い信号となるIMTファントムを改良作成し,国内市販超音波診断装置全8社のエコー画像を取得し,市販計測ソフト,搭載計測ソフトを用い計測値の差異を調査した.結果:IMTファントムを用い全機種で搭載計測ソフトによるIMT解析が可能であった.搭載計測ソフトでは装置間最大差は0.08 mm,差の4分位範囲は0.06 mmであった.一方,市販計測ソフトでは装置間最大差は0.16 mm,差の4分位範囲は0.06 mmであった.結論:IMTファントムを用いたIMT計測の装置間差は搭載計測ソフトを使用した場合に最大差は0.10 mm未満であり,搭載計測ソフトは市販計測ソフトと比較し,装置間の差異を減少させることが示された.将来的に,装置間差をさらに改善させるためには,標準IMTファントムを基準とした装置計測ソフトによる調整が有効な対策であると期待される.