抄録
大動脈弁閉鎖不全症や基部拡張病変に対する外科的治療のガイドラインは大動脈弁置換術を想定しているが,形成を目指すならより早い時期が望ましく,心エコー実施医は重要な役割を占める.全ての病態で理論的には形成可能である.Type Iaは上行大動脈置換の適応だが他病変の併存に注意が必要である.Type Ibは弁温存基部置換術の適応確定のため,大動脈基部サイズの正確な測定が必須である.Type Icはannuloplastyの良い適応であるが,各々一長一短がある.External suture annuloplastyは簡便だがventriculo-aortic junctionを縫縮し,external ring annuloplastyは煩雑だがbasal ringを縫縮する.Internal rigid ring annuloplastyは簡便にbasal ringの縫縮が可能だが,硬いリングが近接するデリケートな弁尖に及ぼす影響に懸念が残る.Type Idはパッチ形成術の成績が良好だが,他のジェットが混在すると術前診断は困難である.Type IIは最もポピュラーでcentral plicationが標準術式と言って良く,eccentric jet,effective heightの低下,弁尖のbendingなどで容易に診断可能である.Type IIIは心膜による弁尖延長を要し,心膜自体が再発のリスク因子であり,最もエコー診断が重要であるが,弁尖長は過小評価されやすい.二尖弁では狭窄回避,交連角度調整,cusp bulging回避などにおいて,心エコー実施医が最も活躍すべき場であろう.今後大動脈弁形成が標準化され,ガイドラインが改訂され,より多くの大動脈弁が温存されることが望まれる.