超音波医学
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大動脈弁逆流の成因と解剖学的知見
大西 哲存川合 宏哉
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: JJMU.R.122

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抄録
大動脈弁逆流症(aortic regurgitation: AR)による慢性的な容量負荷は,無症候性に心筋障害を進行させる.重症ARを有する心機能低下例や症状出現例では外科手術が適応となる.近年,ARに対する自己弁温存基部置換術や大動脈弁形成術の治療成績が向上しており,本邦でも積極的に形成術を選択する施設が増えている.術前の経胸壁および経食道心エコー図による大動脈弁および大動脈弁複合体の評価は,治療戦略に必要不可欠である.心エコー図検査では,心腔のサイズ計測や心機能評価だけでなく,弁の変性の程度,弁の逸脱や穿孔の有無,大動脈基部の拡張・肥厚・解離・石灰化を観察できる.大動脈弁形成術を考慮した病型分類では,弁輪拡大はあるが正常弁葉を有する群をType I,弁逸脱を有する群をType II,弁の可動制限を有する群をType IIIとARを3群に分けた.Type Iをさらに,上行大動脈およびバルサルバ洞と大動脈の移行部(ST junction)の拡大によるものをType Ia,バルサルバ洞とST junctionの拡大によるものをType Ib,左室と大動脈の移行部(VA junction)の拡大によるものをType Ic,弁輪拡大はなく弁穿孔によるものをType Idと細分化し,術式を対応させている.ARの成因・病態を見極める上で,心エコー図検査は形態的および機能的評価に優れており,外科的治療の術式を決定する上で必要不可欠である.ARに対する外科治療は近年大きく進歩してきているため,その術前心エコー図評価もより臨床に役立つものへと対応してゆく必要がある.
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