論文ID: JJMU.R.180
負荷心エコー図検査は,虚血性心疾患,心臓弁膜症(VHD),心不全,先天性心疾患,肺高血圧など複数の心血管疾患の評価に広く使用されている.無症候性の重症または症候性の非重症心臓弁膜症において,負荷心エコー図検査は患者管理の中心的な役割を果たす.2017年現在,アメリカ心臓病学会,アメリカ心臓協会,欧州心臓病学会および欧州心臓協会の心臓手術VHDガイドラインでは,(1)症状と弁膜病変との関連を確認する,および(2)運動に対する血行動態反応を評価する目的で負荷試験を推奨している.例えば大動脈弁狭窄症の重症度を評価する際,低流量患者の場合では,負荷心エコー図検査を用いることで負荷に対する流量依存性変化をとらえ,重症であるかを判断することができる.VHDにおける負荷心エコー図検査の臨床的適応は,本手法の予後予測能が明らかになるにつれて拡大し,治療介入の初期マーカーとなりえる.一方,実臨床で利用していくために,VHDの負荷心エコー図検査の標準化は必要であろう.心エコー図検査を行う施設は,負荷心エコー図検査のVHDへの最適な応用法と精度を向上させていくために,まずはその臨床的有用性を認識する必要がある.本論説では,負荷心エコー図検査は安全であり,症状のない患者の複雑なメカニズムを理解するために有用であることを概説し,VHD患者を適切に管理するための,ドブタミン,自転車エルゴメーター,トレッドミル,下肢陽圧を含む負荷心エコー図検査の臨床的応用について具体例を含め提示する.特にVHDにおける負荷心エコー図検査の使用に関し,現在コンセンサスが得られているポイントに注目したい.