論文ID: JJMU.R.228
加齢は心血管疾患発症の重要な危険因子であることが広く認識されている.加齢に伴う心臓の変化は,心血管疾患の原因となる基質を変化させることにより,高齢者における心血管疾患の発症に影響を与える.しかし,加齢に伴う心臓の変化が加齢そのものに起因するのか,それとも他の後天的な心血管危険因子の獲得による二次的なものに起因するのかは,未だはっきりしていない.加齢と心臓リモデリングの関係を理解することは,心血管系の老化への洞察を得るとともに,高齢者の心血管疾患に対する予防戦略につながる可能性がある.スペックルトラッキング心エコー図法は,従来の心エコーでは検出できなかった心筋の微細な変化を客観的かつ定量的に評価することができ,再現性に優れている.左室収縮機能不全の鋭敏な指標である左室長軸方向ストレインは,心血管疾患および死亡の独立した危険因子であることが明らかになった.最近では,左室のみならず右室や心房の機能を評価するためにも使用されており,低下した右室と心房のストレインは,様々な臨床場面で心血管イベントを予測する.本稿は,加齢と心筋ストレインの変化の関連性を総括し,今後の展望を述べる.