日本線虫学会誌
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短報(英文)
通年湛水水田の線虫相
岡田 浩明丹羽 慈広木 幹也
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2016 年 46 巻 2 号 p. 65-70

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抄録

生物多様性保全におけるアジアの水田の重要性が認識されつつある。夏季のみ湛水される慣行水田の線虫相についてはすでに報告した。淡水池沼の底生に生息する細菌食性や藻類食性の線虫に加え、糸状菌食性や植食性の線虫から構成されていた。今回、谷津田を模して造成され、通年湛水状態にある水田の線虫相を報告する。0–50 mm の土壌深度を5、8、11 月に調査した。0–15 mm の深度に線虫個体の半分以上が集中し、6月の代掻きと田植えによる攪乱後にはこの傾向が強まった。しかし、食性群や分類群の構成は季節によらず安定し、土壌層(0–15、15–50 mm)によらずほぼ同一であった。淡水池沼の底生に生息する典型的な分類群で構成され、Aphanolaimidae とLeptolaimidae の細菌食性線虫が優占する一方、糸状菌食性と植食性の線虫はほとんどいなかった。こうした水田の線虫相は当然ながら、隣接する陸域環境のそれとかなり異なっていた。しかしながらその中には、細菌食性のMonhysteridae 等陸域でも検出されるものがいた。

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© 2016 日本線虫学会
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