抄録
ムギネグサレセンチュウ関連6個体群 (千葉県四街道市の1個体群、熊本県西合志町の寄主を異にする3個体群、大分県九重町の1個体群、鹿児島県溝辺町の1個体群) を形態観察と計測値の統計的解析により比較した。6個体群の唇部形態は酷似しているが、鹿児島県溝辺産の個体群の唇部前縁の突出は弱く、3体環が頻出する。口針節球の形態の変異には、個体群問で若干の重なりがある。尾端形態では、四街道産の個体群と他の5個体群の間に相違がある。線形判別関数分析により6個体群を3群に判別する際、有意に貢献している形質を探索した。それらは、用いた個体群に関する限り、頭端からの排泄孔の距離、G2 (後部子宮枝長/体長の百分率)、口針節球の高さ、V値、m値 (口針錐/口針の百分率) の5形質であった。正準判別分析および主成分分析により、これら5形質の有効性が確認された。上記の解析に基づき大分県九重町および熊本県西合志町のイネ科草本に由来する個体群を新種と認め、Pratylenchus gotohiと命名・記載した。本種はムギネグサレセンチュウから、上記5形質の他に尾部体環数 (20対17;平均値) および尾端形態の相違で区別できる。本種の種小名は、本種を最初に認識し、国内のネグサレセンチュウ属の種の探索と同定に尽力された後藤昭博士に由来する。原野・放牧地等未耕地から検出されるという生態的特徴を考慮し、本種の和名をマキバネグサレセンチュウとしたい。