日本線虫研究会誌
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ブラジル・パラ州トメアスーのコショウ栽培におけるサツマイモネコブセンチュウの寄生
一戸 稔
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1975 年 5 巻 p. 36-40

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抄録

ブラジル・パラ州トメアスー地区のコショウ栽培は, 日本人移住者による300万株, 3,000haに及ぶ大規模なものであるが, 約20年前から「根ぐされ」と呼ぶ病害が発生し, Fusarium solani f. piperiによるとされた.筆者は1975年1月, その原因調査のため現地に赴き, 11名の調査協力者と共に4つの調査班を編成し, 各班ごと, コショウの無作為抽出によるネコブセンチュウ寄生度の疫学的調査を行なった.全体を4地区に分け, 各地区ごと約15圃場, 1圃場10株を任意に選び, 根圏の一部を掘り, ナイフで根の表層を除去し, ネコブセンチュウの雌虫・卵塊・周辺組織の腐敗の確認により根こぶ指数 (0~4) を調べた.その結果,(i) 全調査圃場74のうち, 10株全部が指数0の圃場はわずか1であった.(ii) 全調査株737の91%は指数1以上で, したがって10株中9株の割でネコブセンチュウが寄生している.(iii) 指数3および4は全調査株の75%を占め, したがって4株中3株は “高い” 寄生度といえる.(iv) 樹令2~4年の株の寄生度は5年以上のそれよりもやや低い傾向を示し,(v) 寄生度と土性 (粗粒・中粒・微粒) との関係ははっきりしなかった.(vi) 日本に持帰った標本により種を精査し, 主体はサツマイモネコブセンチュウと同定したし (vii) インドネシアのコショウのYellows diseaseの原因とされるミガンネモグリセンチュウは, 葉の黄化という共通な病徴の発現はあるが, トメアスーのコショウからは検出されなかった.

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