1)マツノザイセンチュウの卵および幼虫の発育経過を, 25℃の温度条件下で明らかにした. 胚発生はTylenchidaの線虫に共通した経過をしめした.産下時の単細胞期から, 9~12時間後に蝌州期にはいり, 産下後15~22時間で第1期幼虫の形成が認められた, 卵内で1回脱皮したのち, 第2期幼虫として卿化する. 産下後26~32時間である.孵化した第2期幼虫を
Botrytis cinereaの菌そう上におくと, 直ちに摂食活動にはいり, 3回の脱皮と, 体長増大, 生殖腺の発達をともないながら, 成長して, 4日後には成虫に達して産卵活動をはじめた.食餌のない場合, 幼虫はまったく成長せず, 脱皮にもいたらない.
2)つぎつぎと世代をくり返して個体数をふやす増殖期に対し, 生活環における特殊化したステージとしての分散型幼虫について, 形態的特徴を明らかにするとともに, その位置づけを行った.分散型第3期幼虫は, 環境の不良化に対応してあらわれ, そのような環境条件下でより耐性をそなえたステージとして, また, つぎの分散型第4期幼虫へすすむための前駆的ステージとして位置づけされる.分散型第4期幼虫は昆虫の体に保持されて, 新しい生息環境に分散移動するためのステージである.
3)異なる温度条件下での
B.lignicolusの生活史を,
B.cimnaの菌そう上において明らかにした. 30℃でもっとも成長がはやく, 1世代は3日間で完了する. 25℃では4~5日, 20℃で6日, 15℃で12日であった. 30℃ をこえると生育上の障害が起こった.理論的数値としてえられた発育限界温度は9.5℃である.
B.lignicolusでは交尾, 受精が産卵活動のために不可欠である.
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