2017 年 15 巻 2 号 p. 45-49
せん妄は、急性に生じる注意障害を主体とした精神神経症状の総称である。せん妄は、精神的苦痛やコミュニケーションの阻害による苦痛に加え、身体症状のコントロールの悪化を招くこと、転倒やルートトラブルなど医療安全上の問題とも関連するため、その対策は緊急の課題である。せん妄に対して、増悪因子や直接原因を可能な限り管理・制御することにより、せん妄の発症を予防する試みが様々行われてきた。近年、看護師を中心とする多職種による複合的な介入は、せん妄の発症率ならびに重症化を防ぐうえで有効性が示されつつある。超高齢社会を迎えたわが国でも、せん妄に対する認識が深まるとともに、今後、わが国の医療体制においても実施可能な簡便なせん妄への対応方法が確立し、普及することが望まれる。