日本腎臓病薬物療法学会誌
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症例報告
ダプロデュスタットではなく、ロキサデュスタットに関連した血清甲状腺刺激ホルモン低下がみられた一例
三宅 瑞穂 古久保 拓吉田 拓弥和泉 智庄司 繁市
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2022 年 11 巻 2 号 p. 179-183

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抄録

低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬であるロキサデュスタット投与中のみ血中甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低下し、ダプロデュスタット投与中は低下しなかった症例を経験した。

90歳代女性、CKD G5の患者、過去に甲状腺機能異常の指摘はなかった。腎性貧血治療にダプロデュスタット、ダルベポエチンアルファ、ロキサデュスタットを順に使用した。ダプロデュスタット投与中はTSH 5.950 μIU/mL、遊離サイロキシン(FT4)0.77 ng/dLであった。HD導入時にダプロデュスタットからダルベポエチンアルファに変更し、投与中のTSH 2.830 μIU/mL、FT4 1.14 ng/dLであった。ヘモグロビン7.9~9.8 g/dLと低値で経過し、ダルベポエチンアルファからロキサデュスタットに変更した。ロキサデュスタット開始4日目頃より倦怠感、開始15日目に希死念慮、HD拒否の抑うつ症状が出現した。その症状と過去の報告より、ロキサデュスタット投与に関連した甲状腺機能低下症が疑われた。ロキサデュスタット開始16日目にTSH 0.051 μIU/mL、FT4 0.77 ng/dLとTSHの著明な低下を認めた。開始21日目にロキサデュスタットを中止した。中止7日目頃に倦怠感は軽減し、中止19日後にTSHは正常化した。

ロキサデュスタットはトリヨードサイロニンと類似した化学構造を有し、視床下部と下垂体の甲状腺ホルモン受容体に作用し、TSH分泌を抑制させると考えられている。本症例は、TSH低下がHIF-PH阻害薬に共通の現象でない可能性を示している。ロキサデュスタット開始後は甲状腺関連検査を実施し、甲状腺機能異常に伴う症状をモニターすべきと考えられる。

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© 2022 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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