2024 年 13 巻 2 号 p. 201-205
血液透析(HD)患者の緑内障治療において、腎排泄型薬剤アセタゾラミド(AZ)錠を一般的な治療域を超える投与量に設定し、血中濃度と副作用の観察を行った症例を経験した。
症例は50歳代女性のHD患者。糖尿病性網膜症に続発した右閉塞隅角緑内障に対して眼科通院にて治療されていた。治療には複数の点眼薬とAZ錠を使用しており、AZ錠1回125 mg週3回内服にてAZの血中濃度は14.3 μg/mLと治療域内(治療域: 5~15 µg/mL)であった。しかしながら、眼科医より透析主治医へ眼圧上昇の指摘があり、緑内障手術が実施されるまでの期間に限りAZの増量が眼科医より提案された。透析主治医よりAZ用量設定の相談を受けた薬剤師は、増量に伴う血中AZ濃度上昇により発現する可能性のある中枢神経症状、血球減少、電解質異常などの副作用、および血中AZ濃度のモニタリングを条件に、1回125 mg週5回への増量を提案した。増量後、月1回測定された血中濃度は21.2 μg /mL、21.6 μg /mL、17.5 μg /mLと治療域を上回る濃度で推移し、眼圧上昇は抑制された。その後、緑内障手術が施行され、眼圧改善を認めたため、眼科医指示により、AZ錠は中止となった。AZ増量期間中、血球減少、電解質異常、およびけいれんや精神錯乱などの中枢神経症状は認めなかった。
緑内障治療における高濃度AZの有効性については明確ではないものの、HD患者に対する一般的なAZの用量設定だけでなく、眼科医とも連携し、理論的な投与計画と安全性についての観察により治療が継続可能であった症例と考えられる。