日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
入院血液透析患者のせん妄治療におけるチアプリド塩酸塩の適正使用
島 祐子平田 純生佐野 豪泰田辺 知子辻 晶子奥田 洽爾黒田 昌宏
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2016 年 5 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

せん妄や興奮状態の改善に用いるチアプリド塩酸塩(チアプリド)は未変化体の尿中排泄率が高いことから、腎機能低下患者や血液透析(HD)患者に用いる場合は適切な減量が必要である。過量投与では過鎮静や傾眠状態が、また抗ドパミン作用による錐体外路症状が発現することがわかっている。チアプリドの高齢者への使用では開始量として1回25mg1日1-2回が推奨されているが、HD患者への使用は具体的に明示されていない。そこでチアプリドの使用実態調査を行いその有効性と安全性を検討した。調査対象は2002年4月-2012年8月の入院患者で、せん妄治療にチアプリドを使用したHD患者(32人)とした。有効性は高齢者に使用した報告と同じく高く、効果発現も速やかだった。無効であった患者3人はいずれも1回25mgの単回使用だった。対象となったHD患者32人のうち有害反応発生群7人(Naranjo ADR scale 5以上)と有害反応非発生群25人を比較した。37.5mg/日以上の服用群は25mg/日以下の服用群に比し、有害反応発生率は有意に高く(P<0.0001)、体重当たりの用量が0.6mg/kg/日以上の群は0.5mg/kg/日以下の服用群に比し有害反応の発生が顕著だった(P=0.0049)。また効果発現が早期(3日以内)であった群と4日以上の群を比較すると、早期に効果発現した患者では有害反応発生率が高かった(P=0.044)。有害反応を発生した患者では抗精神病薬や抗不安薬などの併用がみられ、その影響が示唆された。今回の調査結果をうけて、1日37.5mg以上の用量では効果発現は早いため、初回負荷投与は有効かもしれないが現時点では明らかでない。しかし維持用量として25mg/日まで、または0.5mg/kg/日までの投与量が適正使用と考えられる。今後、症例数を増やしたさらなる検討が必要である。

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© 2016 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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