日本鳥学会誌
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原著論文
利根川水系鬼怒川中流域におけるアユの放流がカワウの採食分布に与える影響
松家 大樹藤岡 正博
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2006 年 55 巻 2 号 p. 67-77

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抄録

アユの放流がカワウの採食分布に与える影響を明らかにするため, 利根川水系鬼怒川の46kmの区間で2005年3月~8月にカワウの分布を19回調査した. この間に16地点で延べ26回, 2,417kgのアユが放流された. アユは放流後6日目まで放流地点付近で群れており, カワウの捕食にあいやすいとみなした. 調査ごとのカワウ総個体数はその時点でカワウが利用可能と推測されたアユ放流量とは有意な相関はなく, アユ放流が始まる前から多くて放流アユがまだ大量に群れていると考えられる4月下旬に激減した. 全区間内のカワウ採食個体数に対する放流地点付近 (上下500m以内) での採食個体数の割合は放流前の方が放流後より高かった. また, 15の放流地点のうち12地点においては放流後に付近で採食しているカワウが確認されなかった. 以上のことから, 本調査地ではアユの放流は, 調査区間全体への飛来数にも調査区間内でのカワウの採食分布にも大きな影響は与えていないことが示唆された.

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© 2006 日本鳥学会
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