日本鳥学会誌
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原著論文
男女群島におけるアカヒゲErithacus komadoriの生息状況と集団の分子系統的位置
関 伸一
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2009 年 58 巻 1 号 p. 18-27

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抄録

男女群島におけるアカヒゲの生息状況と集団の分子系統的位置について2003–2006年に調査した.まず,森林の発達した男島および女島の2島において,森林内の任意の地点で定点観察とさえずりの録音再生により,アカヒゲのなわばり密度を調査した.その結果,男島西部でのなわばり密度は0.4–0.5/ha,女島北部では0.4/haとなり,1980年代以前の報告に比べてなわばり密度の低下が進んでいると考えられた.要因としては,人為的影響も含めた捕食者相の変化や,自然攪乱などによる森林環境の大きな変化が考えられたが,要因を特定することは出来なかった.次に,男島で捕獲された2個体の形態とミトコンドリアDNAコントロール領域の塩基配列とを分析した.トカラ列島から奄美群島に生息する集団との明確な形態変異は認められなかった.得られたハプロタイプは同一で男女群島固有のものであったが,ハプロタイプ間の最尤系統樹では亜種アカヒゲの系統群に含まれ,亜種内の他の集団との遺伝的距離は0.0054–0.0064 (K-2p distance) と小さかった.これは男女群島集団が成立または分布が分断された時期が,亜種の分化が起こった年代に比べてごく最近,亜種アカヒゲ系統群の個体数の放散が起こりトカラ列島・奄美大島・徳之島の3集団が分化したのと同年代であることを示唆する.

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© 2009 日本鳥学会
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