日本鳥学会誌
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原著論文
沖縄島北部やんばる地域における森林性動物の地上利用パターンとジャワマングースHerpestes javanicusの侵入に対する脆弱性について
小高 信彦久高 将和嵩原 建二佐藤 大樹
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2009 年 58 巻 1 号 p. 28-45

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抄録

沖縄島北部やんばる地域において,森林性動物による地上利用パターンと外来種マングースHerpestes javanicusの侵入に対する脆弱性について検討するため,自動撮影カメラを用いた調査を2年間(のべカメラ日15,742.4日)実施した.合計8,444枚に動物が撮影され,鳥類が7,400枚,哺乳類が1,044枚で,鳥類の比率は87.6%であった.中でも,ヤンバルクイナGallirallus okinawae(4,308枚)が最も多く撮影され,この他,アカヒゲErithacus komadori(910枚)やノグチゲラSapheopipo noguchii(108枚)などの在来希少鳥類が多く撮影されていた.フクロウ類をのぞき,ほとんどの鳥類が日中に地上で撮影され,夜行性が報告されている種(ヤマシギ類,ミゾゴイGorsachius goisagi) においても主な撮影時間帯は日中であった.地上を利用する動物種の構成比率や撮影頻度は,季節,年次に伴い大きく変動した.ヤンバルクイナでは繁殖期にあたる夏期の撮影頻度は,冬期よりも有意に高かった.冬鳥であるツグミ類やヤマシギ類では冬期に撮影頻度が増加したが,留鳥であるキジバトStreptopelia orientalisやカラスバトColumba janthinaにおいても同様の傾向が見られた.ツグミ類の撮影頻度には,年次による有意な差がみられ,撮影動物種の構成比率の年次変動に大きく寄与していた.鳥類による地上利用頻度の季節・年次変動には,繁殖活動,渡り,採餌場所の季節変化など,複数の要因が寄与していると考えられた.ヤンバルクイナの撮影頻度は,マングースの撮影頻度の高い地域で減少していた.森林性鳥類の多くは,繁殖地,渡りの中継地,越冬地としてやんばる地域の森林の地上を主に日中利用している.地上が主な活動場所であり,昼行性の外来捕食者であるマングースの侵入は,やんばる地域の森林性鳥類群集全体に大きな影響を与える問題である.

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