2012 年 61 巻 1 号 p. 6-16
カワウPhalacrocorax carboは北海道から九州まで様々な環境(沿岸と内陸)で繁殖し,多様な魚種を採食する.産卵開始時期と一腹卵数に影響する要因を調べるため,中部地域の4~6カ所のカワウコロニーで,繁殖生態を2~3年間調べた.平均産卵日はコロニーや年によって2ヶ月の差があった.内陸のコロニーでは,1週間のうちに全体の20%以上の個体が繁殖を始めることはほとんどなく,同調度が低い一方で,沿岸のコロニーのほとんどが,1~2週間のうちに全体の20%以上の個体が繁殖を始めており,40%以上の個体が繁殖を始めることもあるなど,同調する傾向が認められた.産卵開始時期は気象に影響されなかった.また,一腹卵数は,年,地域に影響を受けなかった.各コロニーにおける産卵開始時期とその同調度合いは,コロニー周辺の餌環境に影響を受けている可能性がある.