日本鳥学会誌
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原著論文
キビタキFicedula narcissinaの採餌行動の性差
岡久 雄二森本 元高木 憲太郎
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2012 年 61 巻 1 号 p. 91-99

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抄録

スズメ目鳥類の採餌行動に対する性差と植生の影響を調べるために,山梨県富士山原始林の落葉広葉樹林と常緑針葉樹林においてキビタキFicedula narcissinaを対象に,採餌高と採餌方法を調査した.採餌高の性差は植生間で傾向が異なり,広葉樹林では雄は雌より高い場所で採餌を行ったが,針葉樹林では雌が雄より高い場所で採餌を行った.雄の採餌高はソングポストの高さに影響されており,雌の採餌高は巣の高さと植生に影響されていた.これらより,キビタキの雌雄の採餌高に性差が見られるのは,雌雄がそれぞれ異なる繁殖分担によって採餌高を制限されているが,雄のなわばり防衛と雌の抱卵・抱雛という繁殖分担は,それぞれの性に対する制約の強さが違う可能性が示唆された.また,2009年には両方の植生で,雌はホバリングを多く行った.ホバリングは5月下旬から6月にかけての抱卵・育雛期に多く観察された.キビタキは,雌のみが造巣や抱卵を行なうため,雌は巣の周囲で採餌を行う制約を負い,短い時間で餌を探索し採餌する必要が生じる.これは雌が狭い範囲で採餌をすることができるホバリングによる採餌を多用する可能性を示唆する.一方,2010年には採餌方法の性差が認められなかった.このため,採餌方法の性差には植生でなく気候や餌量の年変化が大きく影響すると考えられた.

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© 2012 日本鳥学会
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