日本重症心身障害学会誌
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P-2-E20 高度変形で側臥位困難な利用者に側臥位保持装置を作製し褥瘡と呼吸障害が改善した一例
杉浦 眞紀濱田 里砂小峯 聡
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2016 年 41 巻 2 号 p. 301

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抄録

はじめに 重症心身障害者にとって多様な姿勢は不可欠だが、側臥位に対する抵抗が強く、骨粗鬆症で骨折を繰り返し、変形の高度な症例では体位変換と安定した姿勢の保持は容易ではない。われわれは、骨折後に生じた褥瘡と呼吸障害に対して姿勢管理の工夫を行い、改善に至ったので報告する。 症例 69歳男性、周産期障害後遺症、大島分類1。亀背、左凸側弯、左胸郭背部の突出変形、右下肢の高度伸展位拘縮、左下肢の屈曲拘縮がある。仰臥位しかとれず、左上肢で強く左膝を抱え込み、右肘を床に押し付けて全身を緊張させており、左背部のみが支持基底面であった。X年11月に右大腿骨の5回目の骨折に対し軟性ニーブレースで固定した。X+1年2月深部静脈血栓症による肺梗塞を発症した。4月全身状態不良に伴い体幹の運動性が低下し、突出した背部に褥瘡が出現した。側臥位保持は変形と本人の抵抗のためできなかった。骨折治癒後、6月より肺炎を繰り返し、カフアシスト®・呼吸理学療法を併用するも11月に重篤な無気肺となった。 方法 ジェルトロンマットを搭載した側臥位保持装置と担架型シートを作製し、体位変換と姿勢保持を行った。病棟職員に対しては使用開始時に目的および方法の勉強会を実施した。 結果と考察 側臥位保持装置と担架型シートの使用により、抵抗なく側臥位が保持でき、背部の除圧が可能となり褥瘡が治癒した。また、緊張緩和と酸素飽和度の改善も認められた。以後現在まで肺炎に罹患していない。安定した側臥位保持により上側の胸郭が体重支持から解放され、呼吸運動が確保されたことと、体幹の支持基底面を広く確保できたことによる緊張緩和が、全身のリラクゼーションと深い呼吸を促進し、肺炎・無気肺の治癒および再発防止につながったと考えられた。さらに担架型シートの使用で緊張を誘発せず、体位交換がより安全に少ない人数で可能となり、介護負担も軽減した。

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© 2016 日本重症心身障害学会
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