抄録
鳥類の種分化を加速する要因,減速する要因が概観され,議論が行われた.最近行われた実証的研究によると,鳥類の系統間に見られる種数の変異が単純に偶然によるという説は支持されない.鳥類の一部の科や小目では種数がとても多くなっているが,それには大きな脳,行動の柔軟性,採餌行動におけるジェネラリスト的傾向,強い性選択,高い突然変異率などの内的な生物学的要因が有意に影響している.鳥類学者の多くは遺伝子流動が種分化を厳しく制限する要因だと考えているが,最近の理論的,実証的研究の中には,遺伝子流動下の種分化が以前に思われていたよりも起こりやすいイベントであること,そしてそれが鳥類において実際に起きたことを示唆するものがある.