小児歯科学雑誌
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原著
睡眠時鼻閉塞と可撤式床装置着用の実態に関する検討 ―鼻腔抵抗と小学生版子どもの眠り質問票を用いた評価―
齊藤 桂子佐橋 喜志夫鷲野 嘉映橋口 大輔森川 和政
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2022 年 60 巻 3 号 p. 99-107

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抄録

睡眠時鼻閉塞と上顎可撤式床装置の着用実態との関連性を検討する目的で,鼻閉塞を客観的に評価できる仰臥位の鼻腔抵抗値と被験者の保護者が間接的に評価する小学生版子どもの眠りの質問票(Japanese Sleep Questionnaire for elementary schoolers:JSQ-ES)の睡眠時呼吸障害に関する5項目の各得点,総得点について,上顎可撤式床装置の着用群69名と非着用群31名の検討を行った。その結果,仰臥位での鼻腔抵抗値は,着用群が,0.51±0.13 Pa/cm3/s,非着用群が0.70±0.16 Pa/cm3/sで,非着用群が有意に高い値を示した(p<0.05)。また,JSQ-ESにおける睡眠時呼吸障害に関する5項目に関するアンケート調査では,平均総得点が着用群10.5±3.2点,非着用群が12.2±4.0点であり,非着用群が有意に高かった(p<0.05)。また,座位の鼻腔抵抗値が仰臥位のそれより大きい値を示した比率は,非着用群が着用群に比べ有意に高いことも判明した。仰臥位の鼻腔抵抗値とJSQ-ESにおける睡眠時呼吸障害に関する5項目の各得点,総得点について相関関係を調べると,非着用群において正の相関関係を認めた。以上のことから,睡眠時の鼻閉塞が装置着用を困難にする可能性が示唆された。また,JSQ-ESにおける睡眠時呼吸障害に関する5項目の各得点,総得点は,睡眠時の鼻閉塞を客観的に評価する仰臥位の鼻腔抵抗値の結果を反映していることも判明した。上顎可撤式床装置を使用した咬合誘導の際に効果的な治療を行うためにも,鼻閉塞の診断が今後推奨されると考える。

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© 2022 日本小児歯科学会
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