日本鳥学会誌
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原著論文
スズメによる電柱への営巣:地域および環境間の比較
三上 修菅原 卓也松井 晋加藤 貴大森本 元笠原 里恵上田 恵介
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2014 年 63 巻 1 号 p. 3-13

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抄録

スズメPasser montanusは日本の都市を代表する鳥であり,もっとも身近な生き物の一つである.スズメは人工構造物にできた隙間に営巣するので,ヒトHomo sapiensはEcological Engineer種として,スズメに生息環境(営巣環境)を提供しているといえる.スズメは電柱にも営巣することがわかっている.ときにそれは停電という問題を引き起こす.このような軋轢を解消しつつも,スズメとヒトが都市のなかで共存することが重要である.そこで,本研究では,スズメによる電柱への営巣の基礎的な情報を得ることを目的とした.その結果,スズメが主に営巣しているのは,電柱の構造物のうち腕金であることが明らかになった.ただし,都市によって,営巣している構造物および数に違いが見られた.これは,管轄している電力会社が異なるため,営巣可能な電柱の構造物の種類及び数に違いがあるからである.さらに関東地方の都市部と郊外で比べたところ,都市部では電柱への営巣が多く,郊外では人家の屋根への営巣が多かった.これは,都市部では,電柱の構造が複雑化するため,電柱に営巣できる隙間が多いこと,郊外は,屋根瓦が多く,屋根に営巣できる隙間が多かったことなどが原因と考えられる.スズメの電柱への営巣は停電を引き起こしうるので,営巣させないような努力が必要であるが,一方で,建物の気密性が高まっていることで,スズメの営巣環境は減っている.スズメが営巣できる環境を維持しつつ,電柱への営巣を制限する道を探っていく必要があるだろう.

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© 2014 日本鳥学会
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