2015 年 64 巻 2 号 p. 195-206
クマタカNisaetus nipalensisは,種の保存法による保護の対象種であり,近年,繁殖成功率の低下が懸念されている.しかし,全国的に見た繁殖成功率については,未だ調査されていない.本研究では,1994年から2008年まで15年間のあいだに,国土交通省及び水資源開発公団(現水資源機構)のダム事業に係る調査で収集されたデータを基に,クマタカの繁殖成功率とそれに係わる環境要因について分析した.繁殖成功率は全国平均で33.2%(n=512)であり,少なくとも調査期間中には,繁殖成功率の低下は見られなかった.また,繁殖に影響を与える環境要因として,積雪深,巣立ち前年のブナの豊凶の状況及び前年の繁殖成功・失敗があげられた.