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日本鳥学会誌
Vol. 65 (2016) No. 1 p. 5-30

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http://doi.org/10.3838/jjo.65.5

総説(モノグラフ)

 日本産カササギは約400年前に朝鮮半島より,北部九州の限られた地域に移入された.移入当初の保護の下で個体群が定着し,筑紫平野で個体数を増やしたが,大きく分布を広げることはなかった.本格的な分布の拡大と個体数の大きな増加は20世紀後半から始まり,特に最近の30年間に際立っている.本論文では,日本産カササギの生態と生活史の諸特徴に関する知見を整理し,個体数と分布の変遷に関与した諸要因について考察した.
 本種は雑食性で,状況に応じて人工物も利用するという可塑的な営巣場所選好特性を持ち,産卵数が多いという,侵入地への定着後に急速に個体数を増加させる可能性のある生態,生活史特性を持つ.一方,形態的には飛翔力に恵まれず,出生地近辺への定住性が高いという,通常は長距離分散と縁のない特性を持つ.最近まで分布が急激に拡大しなかったのは,丘陵地の森林が障壁となったためであり,環境改変による障壁の消失が最近の分布拡大を引き起こしたと考えられる.
 最近の分布域の拡大と個体数増加は,生息環境の都市化と本種の都市環境への適応がもたらしたと考える.本種は農村の集落内の高木に営巣するが,1980年代以降の都市近郊の住宅地開発にともない電柱への営巣が急増し,それとともに都市近郊での営巣数が増加した.しかし,さらに都市化が進んだ地域では1990年代以降に営巣数が減少している.都市中心部での採餌環境の悪化が原因であろうと考えられる.
 カササギは国内および世界各地で都市への侵入定着,個体数増加の傾向が見られる.このような都市化環境での本種の営巣数を継続記録し,その生態,生活史,社会を明らかにすることにより,鳥類の侵入定着を左右する要因を解明するための新しい知見を提供すると期待できる.

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