2018 年 67 巻 1 号 p. 101-107
ウミネコLarus crassirostrisにおいて,隣接営巣個体および侵入個体に対する縄張り防衛行動を,半裸地区と高さ2-3 mの上部被覆のある高茎草本植生区とで比較した.両区で隣接営巣個体への縄張り防衛頻度に差はなかったが,侵入個体に対する縄張り防衛頻度は半裸地区で高茎草本植生区の8倍近かった.また,半裸地区の個体の方が高茎草本植生区より強度の防衛と応答行動をとった.さらに,草本の刈り取り実験をおこなったところ,オープンな場所には上空からの侵入個体が観察されるようになった(1.8±1.2回/2時間)が草本を残したままの場所では観察されなかった.これらは,上部が大きな葉で覆われる高茎草本植生は,上空からの個体の侵入を妨げ,縄張り防衛頻度を減少させることを示す.