日本鳥学会誌
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総説(黒田賞)
鳥類による人工構造物への営巣:日本における事例とその展望
三上 修
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キーワード: 人工構造物, 都市, 営巣,
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 68 巻 1 号 p. 1-18

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抄録

スズメ,ツバメをはじめとして,さまざまな鳥類が人工構造物に営巣をしている.これまで,この現象は,何か奇異な現象として捉えられることが多かった.しかし,都市の拡大とともに人工構造物の数は増加しており,都市において,鳥類が人工構造物に営巣することは,すでに日常的な景色となっている.そこで本稿では,日本において,どの種がどのような人工構造物を使って営巣しているかをまとめ,その上で,鳥が人工構造物に営巣していることを,どのような視点でとらえることができるか検討をした.鳥が人工構造物に営巣することは,ヒトと鳥との相互作用として捉えることができ,特に,ヒトの文化がどのように鳥類に影響を与えているか,と考えることができる.また,現代の都市の鳥類多様性は,人工構造物にかなりの部分,依拠している可能性も考えられる.鳥類が人工構造物を営巣することで,停電などヒトとの軋轢も生む.鳥類が人工構造物に営巣することで,ヒト,鳥類,それぞれにとって生じる利点と不利点を明らかにしつつ,それに対して人々がどのような価値観をもつのか,どのように対応していくべきなのか,総合的に考えていく必要がある.

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