日本鳥学会誌
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原著論文
野生復帰事業によるコウノトリCiconia boyciana繁殖個体群の再生
江崎 保男大迫 義人
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2019 年 68 巻 2 号 p. 183-192

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抄録

コウノトリCiconia boycianaの野生復帰事業は2005年から北近畿の但馬地域で行なわれてきたが,2017年6月には,野外個体数が100を超えるとともに,徳島県鳴門市において但馬以外で初となるヒナが巣立った.本研究は,日本の再導入個体群確立の経緯を報告するものである.これまでに51羽がリリースされ136羽が巣立ち,これに大陸から飛来した2羽の野生個体を加えた189羽が個体群を構成してきたが,このうち6割にあたる119羽が現在,野外で生活している.本個体群の特徴は,3歳未満の未成熟個体が過半数を占めること,これに3歳以上の独身成熟個体を加えると8割が独身のフローターであること,に認められる.また,性比はメスに大きく偏っているが,このことは野外巣立ち個体の性比に起因している.また,オスの野外残存率がメスに比べて低いことが,性比の歪みを助長している可能性がある.しかし人里に生活する目立つ大型種であるが故に,直接的な人為の影響を正負ともに受けているのが実情であり,果たしてオスの死亡率がメスに比べて高いか否かは,今後の研究を待つ必要がある.

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© 2019 日本鳥学会
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