日本鳥学会誌
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総説
沖縄島北部やんばる地域におけるイエネコによる固有鳥類の捕食被害とその対策
長嶺 隆
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2020 年 69 巻 1 号 p. 31-40

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抄録

沖縄島北部やんばる地域の森林にはヤンバルクイナGallirallus okinawaeをはじめ多くの固有種が生息している.無飛翔性のヤンバルクイナに代表されるように,島で進化した固有種は外来哺乳類による捕食に対して脆弱であり,やんばる地域ではイエネコFelis catusによる固有種の捕食が生物多様性の保全上,重要な課題となっている.やんばる地域では,イエネコによる固有種の捕食被害を減らすため,地元の自治体が主体となってマイクロチップを用いた登録制度を含むネコの適正飼養条例を制定した.これらの取り組みにより,飼いネコとノネコを識別することができるようになり,やんばる地域の森林域におけるノネコ対策に大きく貢献した.やんばる地域の固有種の保全のためには,沖縄島の北部だけではなく島全体の取り組みが重要であり,今後もノネコの捕獲と飼いネコの適正飼育の徹底が必要である.

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© 2020 日本鳥学会
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