2000–2001年のスダジイCastanopsis sieboldiiとアラカシQuercus glaucaの堅果成熟・落下期に,奄美大島(鹿児島県)において,ルリカケスGarrulus lidthiの堅果採食行動について調査を行った.調査ではルリカケスの堅果採食行動の観察・ルートセンサスによるスダジイ利用者の調査・成分分析(粗タンパク質,粗脂肪,タンニン)・発芽実験(緑色果,褐色果)の4点を行った.両樹種ともに樹上にある緑色果の利用頻度が高かった.成分分析の結果,未熟の緑色果は成熟した褐色果に比べて,栄養価としては同等,ないし,やや優れており,防衛物質とされるタンニン量に違いは見られず,緑色果はルリカケスの食糧資源としての価値が高いことが示唆された.ルリカケスは堅果を獲得直後に採食することはほとんどなく,大半は持ち去っており,貯食されるものと推察された.アラカシでは緑色果と褐色果の両方とも,大部分の種子が実生まで成長したが,スダジイの緑色果はほとんど発根しなかった.アラカシ利用の観察頻度は高く,スダジイの利用は少ない傾向が見られた.ルリカケスは,アラカシの種子散布者として機能しているが,スダジイにおいては低いことが示唆された.