2020 年 69 巻 2 号 p. 223-234
アオバズクNinox scutulata japonicaは,育雛期間を通じてコウチュウ目を主に給餌することに加え,育雛初期にはチョウ目を高頻度に給餌する.しかしながら,夜行性であるアオバズクの生態調査は困難であるため,育雛期中における給餌様式の変化をもたらす要因は解明されていない.そこで本研究は,アオバズクの餌の種類とその給餌頻度を調べると共に,営巣林内における餌昆虫類の生息数を調査し,餌条件がアオバズクの給餌様式に与える影響を検討した.また,アオバズクがヒナに与える昆虫類の体部位を明らかにし,それを踏まえて本種の給餌生態の特徴を考察した.育雛初期から中期において,アオバズクは優占種でなかったチョウ目を主に給餌した.その一方,育雛後期には,アオバズクは営巣環境中に優占したコウチュウ目を高頻度にヒナに与えていた.以上より,アオバズクは育雛初期から中期に,生息数の少なかったチョウ目を選択的に給餌するのに対し,育雛後期には,営巣環境中に優占するコウチュウ目を頻度依存的にヒナに与えることが示唆された.また,アオバズクは,育雛期間を通して,チョウ目の頭部,胸部,腹部,およびコウチュウ目の腹部を給餌しており,消化器官が未発達なヒナに柔軟な外骨格のみを選択的に与えていると推察された.今後は,アオバズクの消化器官の発達過程を詳細に調査し,ヒナの成長に応じたアオバズクの特異的な給餌生態を生理学的に理解する必要がある.