日本鳥学会誌
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総説
北海道における鳥類の繁殖期の分布
藤巻 裕蔵
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2022 年 71 巻 2 号 p. 121-135

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抄録

北海道では繁殖期に多くの鳥類は全域に生息する全域型の分布をする.一部の種は南部,南西部,東部,北東部,または北部に分布する型である.また地理的に東西南北の偏りはないが,海岸沿いと河川の下流沿い,中流沿いに分布する種がいる.このほか,広く分布する種でも,草原性鳥類は森林に入ることはほとんどないので,おもに平野部と盆地に分布する.森林性鳥類は,農耕地など森林外の環境にも生息する種を除くと,おもに森林のある山地に分布する.山地に生息する鳥類のうち,高標高地に生息する種の分布域は,低標高地にも生息する種におけるより小さくなる.南西部型の分布をする種では,温量指数が大きくなるほど出現率が高くなる.これに対し,北東部型の分布をする種では,温量指数が小さくなるほどよく観察できるようになる.また高標高地に生息する種では温量指数が小さくなるほど出現率が高くなる.これらのことは,一部の種では気温が分布を決める一つの要因になっていることを示唆する.北海道内の一部の地域に分布する種のうち,南部型や南西部型の分布をする種は,東部型,北東部型,北部型の分布をする種より多い.このことは,北海道の鳥類相(繁殖種)が北海道より北のサハリンやロシアのプリモーリエの鳥類相より北海道の南に位置する本州の鳥類相との類似性が高いことによると考えられる.

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