日本鳥学会誌
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原著論文
農耕地帯で繁殖するチュウヒの狩り場環境選択
高橋 佑亮東 淳樹
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キーワード: 獲物, 採食, 選択性, 草地, 農地
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2024 年 73 巻 1 号 p. 23-31

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抄録

農耕地帯で繁殖するチュウヒCircus spilonotusにとってどのような環境が狩り場として重要であるか,資源選択性に基づき評価した.秋田県八郎潟干拓地の営巣地周辺において本種の狩り行動を観察し,獲物の捕獲を試みた地点の環境タイプを記録した.この捕獲試行地点と,地図上で生成したランダム地点をデータとし,狩り場としての利用の有無と環境タイプの関係を,一般化線形モデルを用いて解析した.その結果,採草地,麦畑,幹線用水路や小排水路沿いに見られる草地が,本種の狩り場として有意に選択される環境タイプであることが示された.これらの環境タイプは,ハタネズミMicrotus montebelliまたはカエル類の生息密度が比較的高かった.また,最大草高(4期の中央値)が概ね1 m以下であり,ヨシ原のように高くはなく中間的な高さであった.一方,水田はハタネズミ,カエル類および鳥類の生息密度が低く,営巣地の周辺に豊富に存在するにもかかわらず,本種の狩り場としてほとんど利用されなかった.このように,獲物となる動物が多く,狩りに適した植生構造となっている草地(農作物を含む)が,チュウヒの狩り場として重要な環境と考えられた.

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