本研究では,名古屋市におけるハシブトガラスCorvus macrorhynchosとハシボソガラスC. coroneの生息場所,高さ,ゴミの利用の違いを調べた.観察された個体数は,ハシボソガラスがハシブトガラスより1.2倍多かった.両種とも道路や住宅地の多い地域で個体数が多かったが,ハシボソガラスはハシブトガラスよりも緑地,湿地,農地など自然度の高い場所をよく利用していた.両種とも1015 mの高さで最も頻繁に観察されたが,ハシブトガラスは15 m以上,ハシボソガラスは10 m以下の高さでより頻繁に観察された.カラスによるゴミ荒らしはネット型の収集所で最も頻繁に観察され,その頻度はハシブトガラスよりもハシボソガラスで高かった.本研究で得られた名古屋市におけるハシボソガラスの個体数,生息場所,ゴミの利用についての結果は,市街地に河川が多く流れ,周辺に農地が広がっていることが関係している可能性がある.