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ヤマガラの雛の食物中に含まれている貯蔵食物の割合
樋口 広芳
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1977 年 26 巻 1 号 p. 9-12

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抄録
伊豆諸島三宅島にすむヤマガラについて,1975年と1976年の繁殖期に,親鳥が巣内雛にもつてくる食物の中に秋冬季に貯えておいた木の実がどの位含まれているかを調べた。食物の確認は,巣箱の近くのブラインドの中から撮影した写真に基づいて行なった。得られた結果は次のとおりである。
1)雛に持ってきた木の実の中味はすべて,スダジイの実の中味と認められた。そして,これらは,常態ではこの時期に得られるものではないので,すべて秋冬季に貯えておいたものであると考えられた。
2)雛に与える食物中に占める貯蔵食物の割合は,運搬回数によっても運搬個数に基づいても,調査総数の5%前後にすぎなかった。したがって,貯蔵食物がひなの生長に大きな役割を果したとは考えられない。
3)前年秋のシイの実のなり具合がよくなかった1975年と,よかった1976年とでは,貯蔵食物の占める割合に有意な差は認められなかった。
4)その原因は,この島のヤマガラでは秋に貯えておいたシイの実の大部分を冬季に利用してしまうため,雛を育てる時期には年による著しい違いをもたらす程多くの実が残っていないらしい,ということにあると考えられた。
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© 日本鳥学会
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