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育雛初期におけるモズの捕食行動
唐沢 孝一
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1982 年 31 巻 2-3 号 p. 57-68

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抄録

千葉県千葉市の千葉大学西千葉キャンパス内で繁殖したモズ(孵化後4-5日の育雛初期)の捕食行動を,1977年7月22日-23日に調査し,以下の結果を得た.
(1)雌雄のモズによる捕食行動は,7月22•23日の両日に,195回(雄149回,雌46回)観察され,捕食に成功したのは137回(雄107回,雌30回)であった.捕食に成功した回数のうち,50回については捕食した動物を観察できた.それによると,無脊椎動物が88%を占め,脊椎動物ではスズメ,カナヘビが観察された(Table1).捕食成功率は,雄71.8%,雌65.2%であった.また,雄の捕食した餌の84.1%(90回)は雛に給餌され,雄中心の給餌がみられた.
(2)捕食法は,飛びおり捕食法,フライキャッチ法,追撃法の3タイプが観察された.このうち,飛びおり捕食法は113回(57.9%),フライキャッチ法26回(13.3%),追撃法11回(5.6%)であった.観察回数は飛びおり捕食法が多いが,捕食成功率では,飛びおり捕食法の69.9%に対し,フライキャッチ法が92.3%と著しいく高い功率を示した.追撃法による捕食成功率は9.1%であった.
(3)捕食のために飛び立つ地点,すなわち出撃ポストの地上高としては,3-5m,8m付近が最も多く利用された.雄では0-16mの広域に及ぶのに対し,雌では8m以下の出撃ポストが利用された.また,獲物を捕食した地点の分布についても,雌雄での重複をさける傾向がみられた.
(4)雛への給餌では,スズメ若鳥を捕食し,小枝に刺し,これを次々と肉片に引き裂いて雛に与えるのが観察された.このようなはやにえ給餌は,給餌回数の31.3%を占め,7月23日では,雄の給餌した50.7%に達した.こうしたモズのはやにえ給餌は,繁殖期のモズにごく普通にみられる習性であり,雛が丸のみに出来ない比較的大きな獲物を捕えたときの餌の処理法として,モズの育雛にとって重要な意義をもっていると考えられる.
(5)観察したつがいのモズの行動圏は,雄2,500-3571m2,雌1,071-1,786m2で,雄ではやや広く,雌では巣の周辺に限定されていた.また,すでに報告のあるモズのテリトリー面積よりも著しく狭いものであった.

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