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コサギの就塒前集合
伊藤 信義
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1984 年 33 巻 1 号 p. 13-28

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抄録

1975年10月から1983年9月まで,滋賀県,大阪府,奈良県および岡山県の7か所でコサギを中心とするシラサギ類の就塒行動を調査して,次の結果を得た.
(1)コサギは就塒前集合をする.就塒前集合の観察されるのは,非繁殖期だけである.
(2)就塒前集合には,集合場所が塒から隔たった一定の場所である場合(タイプA),集合場所が塒の所在する林の一部である場合(タイプB),集合が塒の所在する林の上空で群翔しながら行われる場合(タイプC)の3つのタイプが観察された.
(3)就塒前集合はタイプAの観察例が大部分を占め(71.4%,N=7),これが原型であろうと推測された.塒と採食地の間にタイプAの集合のできる場所が得られない場合はタイプBになり,タイプCはタイプBに対して外敵などの抑制因子が働いたときに生起するものと考えられたが,タイプCはこのほかに温かな日に採食地に遅くまでいてからこぞって帰ってくるときにみられ,この場合は集合の全部がタイプCにより行われた.
(4)ひとつの塒に対する集合のタイプはほぼきまっているが,場合によっては相互に移行した.
(5)タイプB•Cでは1か所の集合所から1か所の塒へ就塒したが,タイプAではこのほかに,1か所の集合所から2か所の塒,2か所の集合所からまとまって1か所の塒へ就塒する3通りが観察された.
(6)集合所での行動は,タイブAでは休息•採食•水浴びであった.タイプBでは休息のみであるが,集合の後半に舞い上がっては舞い降りる就塒前活動が認められた.タイプCでは塒の上空での回翔である.
(7)就塒前集合所としての条件は,いずれのタイプでも「ヒトを含めて外敵の接近し難いこと」である.同じ塒でも,短期間内での比較的頻繁な位置移動がある.そして,塒位置の選定要因として,安全性のほかに防寒性があげられる.
(8)コサギの就塒行動には採食地集合および帰塒経路の中間での集合がなく,就塒前集合のみである,就塒前集合所と塒の距離は最短で5m(タイプB),最遠で5,500m(タイプA)であった.
(9)就塒前集合を経ない就塒(直接就塒)は,タイプB•Cのときは集合所からの集団就塒が開始された以後のみに行われ,タイプAのときは集団就塒が開始された以後とそれ以前にもみられた.
(10)じゅうぶん分析に足る資料の得られたタイプB•Cの就塒前集合は,次のとおりであった.
(i)集合個体数は就塒全数の70.6%であった.
(ii)集合に要した時間は平均128.0分で,これは集合開始から直接就塒の終了までの時間の81.2%にあたった.
(iii)集合所への飛来は平均150.4回で,飛来ごとの個体数としては1羽が平均54.3%を占めた.
(iv)集合所からの集団就塒は,平均4.5群に分かれて,平均5.1分間で行われた.
(v)就塒に要する時間は平均26.5分であった.

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