日本鳥学会誌
Online ISSN : 1881-9710
Print ISSN : 0913-400X
ISSN-L : 0913-400X
つがい形成にともなうオオヨシキリ雄の囀り頻度と行動の変化
江崎 保男
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 36 巻 1 号 p. 1-11

詳細
抄録

1)1977年の繁殖期に琵琶湖でオオヨシキリの雄の行動,特に聴りの頻度についての資料を収集した.
2)番い形成と共に噂り頻度は激減したが,卵期には独身時の値まで回復し,雄は独身時とほぼ同じ時間の使い方をしていた.一夫多妻雄はこの時期に第二雌を獲得したが,このことは嚇りが雌誘引機能を持つとの仮説を支持している.
3)番い形成直後の雄は主に雌の世話に従事し,雌との連れだち行動に全体の40%の時間を割いた.連れだち時間は営巣ステージの進行と共に急激に減少し,ひなのいる時期を除くと,連れだち時間と聴り時間の間には負の順位相関関係が検出された.雌の世話は雄の聴りを抑制すると考えられる.
4) ひなのいる雄は給餌に従事し,殆ど晦らなかった.ひなのための餌集めが雄から嚇る時間を奪っていると考えられる.
5)一夫一妻雄は卵;期に一夫多妻雄と全く同様に,植生上で活発に嚇ったが第二雌を獲得できなかった.独身雄(雌を獲得できなかった雄)も他の雄と同程度に囀ったが,植生内で囀ることがしぼしばあり,雌誘引の点で囀りの効果が低かった可能性がある.

著者関連情報
© 日本鳥学会
次の記事
feedback
Top