日本鳥学会誌
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36 巻, 1 号
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  • 江崎 保男
    1987 年 36 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1)1977年の繁殖期に琵琶湖でオオヨシキリの雄の行動,特に聴りの頻度についての資料を収集した.
    2)番い形成と共に噂り頻度は激減したが,卵期には独身時の値まで回復し,雄は独身時とほぼ同じ時間の使い方をしていた.一夫多妻雄はこの時期に第二雌を獲得したが,このことは嚇りが雌誘引機能を持つとの仮説を支持している.
    3)番い形成直後の雄は主に雌の世話に従事し,雌との連れだち行動に全体の40%の時間を割いた.連れだち時間は営巣ステージの進行と共に急激に減少し,ひなのいる時期を除くと,連れだち時間と聴り時間の間には負の順位相関関係が検出された.雌の世話は雄の聴りを抑制すると考えられる.
    4) ひなのいる雄は給餌に従事し,殆ど晦らなかった.ひなのための餌集めが雄から嚇る時間を奪っていると考えられる.
    5)一夫一妻雄は卵;期に一夫多妻雄と全く同様に,植生上で活発に嚇ったが第二雌を獲得できなかった.独身雄(雌を獲得できなかった雄)も他の雄と同程度に囀ったが,植生内で囀ることがしぼしばあり,雌誘引の点で囀りの効果が低かった可能性がある.
  • 上田 惠介
    1987 年 36 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    一夫多妻の鳥セッカでは,繁殖ステージの後期に雌親による卵やひなのいる巣の遺棄がしばしば起こった.
    1) セッカの雄親は抱卵•育雛をまったく手伝わないので,遺棄された卵やヒナはすべて死亡した.
    2)雌親の遺棄による死亡率は抱卵に入った卵の9.3%,ひなの15.2%に及んだ.
    3)遺棄の起こる時期に強い季節性が見られた.8月以降に抱卵に入った30巣の内,12巣(40.0%)が遺棄されたのに対し,それ以前の160巣ではわずか3巣(1.9%)しか遺棄されなかった.
    4)遺棄の原因は,おそらく換羽や渡りの遅れに対する雌親の生理的反応であろうが,充分成長した卵やひなを遺棄することは雌にとって大きな損失になると思われる.
  • 明石 全弘, 山岸 哲
    1987 年 36 巻 1 号 p. 19-45
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1)1980年4月-6月に,大阪府信太山丘陵で,ホオジロの囀りについて調査した.
    2)調査方法は,特定の個体を終日追跡し,囀りを全種類録音し,サウンド•スペクトログラフで分析した.
    3)1個体がもつシラブル数は平均65.9±8.9種類で,隣接個体間で同一シラブルを多く共有する傾向があった(Tables1,2;ApPendixes1,2).
    4)個体によって囀りの最初に使われるシラブルは異なっている傾向があった(Fig.2).
    5)1つのソングの長さは,個体により平均0.9-1.4秒で,1つのソングに含まれるシラブル数は平均6.4-9.6個であった.また1個体がもつソングタイプ数は平均16.1±2.5種類であった(Table3).
    6)1つのバウトは平均22.7-35.5個のソングからなり,ピッチは平均7.8-12.6ソング/分で囀った(Table4).
    7)囀りの頻度は独身雄が番い雄よりも高かった.また繁殖ステージでは,抱卵期が最も良く囀り,育雛期になると日中はほとんど囀らなかった(Fig.4).8)日が進むとソングタイプは僅かに変化した(Fig.6,ApPendix3).
    9)ソソグエリアはほとんど重複がなかった(Figs.8,9).また特定のソングポストで特定のソングタイプを用いるという傾向はなかった(Table5;ApPendix4).
    10)使用するソングタイプの繰り返しを避ける傾向があった.また早朝に多くのソングタイプが使われていた(Tables5,6;Fig.10;ApPendix4).
    11)1個体のもつ全ソングタイプを記録するには,早朝から2時間観察すれば良い(Fig.11).
  • 川路 則友, 迫 静男, 高良 武信
    1987 年 36 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    1)トカラ列島平島(北緯29°41′,東経129°32′)において,1982年から1987年にかけて5回の現地調査を行い,春の渡り期の鳥相を調べた.
    2)全調査期間を通して確認された鳥類は29科122種である.1回の調査での平均確認鳥種は62種で,平島が多くの渡り鳥に利用されていることが明らかになった.
    3)確認された鳥種の大部分は,琉球諸島および奄美諸島を北上する際の中継地として平島を利用していると考えられた.しかし,コルリ•セソダイムシクイ•キクイタダキ•オオルリなどについては,むしろ中国大陸南東部沿岸との関連性が強く示唆された.すなわち,中国大陸から直接九州本土もしくは九州西海上の島嶼に渡る際の中継地として平島が利用されていると思われる.
    4)確認鳥種のうち,鹿児島県初記録としてカラアカハラ,マミジロキビタキ,オジロビタキ,ミヤマヒタキ,キマユホオジロおよびアカマシコの6種が挙げられ,鹿児島県本土で未記録の稀少種としてベニバト,アカコッコ,キマユムシクイ,シマアオジおよびコウライウグイスの5種が含まれる.
  • 松岡 茂, 中村 和雄
    1987 年 36 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    キジバトによるダイズの子葉食害の季節変動のパターンを明らかにするため;1981-1986年の間,4月から8月までほぼ2週間おきに茨城県筑波郡に所在する農業研究センターのほ場でダイズを播種し,その被害状況を調査した.
    1)出芽前の種子段階での被害は,4月には低かったが5月に高くなり,6月以降は再び低くなった.また,第1回目播種よりも2回目播種のダイズの被害粒率が常に高かった.
    2)出芽後の被害は,4月には高い年も低い年もあったが,5月にはほとんどの年で被害本数率が高かった.しかし,6月にはいると被害は少なくなり,その後も比較的低い被害本数率で推移した.総被害本数率が高い場合には,回復不可能な被害(引抜き,生長点までの食害)の割合が高かった.
    3)6月初•中旬のオオムギの成熟期前にはダイズの被害本数率は高かったが,成熟期後は急速に低くなった.
    4)他地域でのダイズの被害の季節変動とムギの収穫期との関係,ドバトの餌内容の季節変化,キジバトの行動の変化,収穫時畑に落下するムギの量などについて考察を行い,6月のダイズの被害率の低下がムギの成熟期と強く関連することを示唆した.
  • 中川 元
    1987 年 36 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 1987/08/25
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    Flocks of Ross's Gulls Larus roseus were observed along the coast of Shiretoko Peninsula, eastern Hokkaido, between 26 and 29 January 1984. On January 26, 24 adults and 8 juveniles in first winter plumage were seen at Maehama, Shari. They were hovering, circling, and occasionally surfacefeeding at sea 10-20 m off the beach. Sometimes they floated on the water, but did not dive. The flock moved from one place to another after foraging for about 10 minutes. Another flock of 67 Ross's Gulls was observed at the Shari Harbor at the same hour by another observer. Thus at least 100 Ross's Gulls were on the Shari coast on that day. Pack ice situated about 2 km off shore and there were brash ice and small ice cakes on the open water between the pack ice and the shore, the condition which seems to be especially favored by the gulls.
    Next day (January 27) the flocks of Ross's Gulls disappeared from the Shari coast as the sea was covered by pack ice and no open water became available. However, several smaller flocks consisting of 5-27 birds were seen along the Shiretoko Peninsula between 27th and 29th. After January 30 the sea was closed by ice and no Ross's Gulls were observed. My observation supports those by DIVOKY (1976, 1981) and DENSLEY(1977) that Ross's Gulls chiefly feed at the edge of pack ice.
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