日本鳥学会誌
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北海道天売島に繁殖するオオセグロカモメの食性の性差•個体差
綿貫 豊
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1989 年 38 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

オオセグロカモメ Larus schistisagus の繁殖期の食性の個体群内変異を北海道羽幌町の天売島(44°25′N,141°19′E)で1984年と1985年に調査した.オオセグロカモメは種としては'何でも屋'であり,浮魚,底魚(投棄された魚),海産無脊椎動物,海鳥の雛を食っていたが,雄の個体間にはとりわけ大きな食性の変異がみられた.
この食性の個体群内変異の一部は性差に依存しているようであった.平均的には,雄は雌よりも頻T底魚と海鳥の雛を給餌し,雌は雄よりも頻繁に浮魚と海産無脊椎動物を給餌した.雄は雌よりも大きかった.しかしながら,体の大きさの変異の大部分は性間でみられたのにたいし,食性変異においては性間よりも個体間で大きな変異がみられた.これは食物をめぐる個体群内競争がサイズの性的2型をもたらした主要な究極要因ではなかったことを示唆する.
海鳥の雛を専門的に捕食するオスは,通常カモメ類(オオセグロカモメとウミネコ,L.crassirostris)の雛を捕食し,他の個体はウトウ Cerorhinca monocerata の雛を捕食していた.オオセグロカモメにとって,カモメ類の雛はウトウの雛よりも,殺すのがより困難な獲物であった.同種の雛を捕食している個体はウミネコの雛を頻繁に捕食した.カモメ類の雛を捕食する時とウトウの雛を捕食する時とでは異なる捕食技術が必要とされるので,これは雄間での捕食技術の個体差を示唆する.

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