日本鳥学会誌
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野火後の湿原におけるノビタキの営巣場所
藤巻 裕蔵シブネェフ Y.B.
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1991 年 40 巻 1 号 p. 33-35

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抄録

北海道帯広市とその周辺でノビタキの巣を調べた結果では,巣は,主に牧草地の草の根元,道路側溝の斜面にある窪みに造られている.4月下旬-5月上旬の植被の少ない時期に造られる巣の上面は枯草で被われており,被いとなる枯草の存在は営巣場所の必要条件である.1990年6月にソ連沿海地方北部のビキン•アルチャン湿原において,野火後の,前年の枯草がない環境で,ノビタキがどのような所に営巣をするかを調査した.湿原はイワノガリヤスとスゲ類のヤチ坊主で,湿原内には大小の沼,潅木•草原,孤立林がある.潅木•草原と孤立林の林床はヤチ坊主湿原より1-2m高く,乾燥しており,前年の枯草はなく,残っている潅木類は枯死している,またヤチ坊主上でも前年の枯草はない.調べた6巣は,孤立林近くのヤチ坊主にあった.このうち1巣は巣立前に捕食者により壊されたが,他の5巣はいずれもヤチ坊主に堀られたハタネズミの1種Microtus fortisのトンネルを利用して造られており,トンネルの入口部が巣の被いとなっていた.巣内には,樹洞営巣性鳥類の雛に寄生する吸血性のトリキンバエProtocalliphora sp.の幼虫がいた.

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