日本鳥学会誌
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DNAを利用した鳥類の系統解析と分類
梶田 学
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1999 年 48 巻 1 号 p. 5-45

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抄録

DNAを用いた鳥類の系統解析は近年急速に発達し,現在では多くの研究例が知られている.DNAの中でもmtDNAは近縁な分類群の系統解析に適した性質を多く持つ.ただし,mtDNAのみを解析に使用した場合には,異種間浸透などによって誤った系統を推定する可能性も知られている.DNAを採取するためのサンプルとしては血液,組織,羽毛などが利用可能で,標本からのDNA採取も可能である.分析はDNA抽出,増幅,塩基配列決定の順で行われる.得られた塩基配列データから,系統推定法によって分類群の系統関係が推定される.得られた系統樹についてはその信頼性を統計的処理によって判断することが可能である.日本周辺には,鳥類の系統や進化に関する研究課題が山積されており,これらの課題を解明するには分子系統学的側面からの研究が不可欠である.今のところDNAの塩基配列データのみを利用して種•亜種の境界を決めることは困難であるが,鳥類の分類を再検討する上での非常に重要な情報となる可能性が高い.DNAの塩基配列データを用いた系統解析が,鳥類の進化を明らかにする上で大きな役割を担う手法となることは間違いなく,この分野の国内での早期の発展が望まれる.

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