2000 年 49 巻 4 号 p. 175-184,190
鳴禽亜目の系統関係を予備的に検討するために鳴禽亜目15科から得られたミトコンドリアDNA12Sおよび16SリボゾームRNA遺伝子の塩基配列を分析した.2つの塩基配列を統合したデータ(881塩基対)から得られた結果は鳴禽亜目に少なくとも3つの系列(セキレイ科•ヒタキ科•ゴジュウカラ科•ホオジロ科•ハタオドリ科•ムクドリ科からなるヒタキグループ,ヒバリ科•ヒヨドリ科•チメドリ科•ウグイス科•シジュウカラ科からなるウグイスグループ,モズ科•オオハシモズ科•フエガラス科•カラス科からなるカラスグループ)が存在することを示唆した.これはSibley & Ahlquist(1990)のDNA•DNAハイブリダイゼイション法に基づく系統仮説を全く支持しなかった.さらに,シジュウカラ科とゴジュウカラ科が近縁でないこと等,これまでの形態学的データに基づく鳴禽亜目の科以上の分類体系に関する問題点が示唆された.